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忘れられない料理
五目チラシ、おはぎ、生姜の甘酢漬け、青梅のコンポート、これらの料理は母親の得意とするものだった。
今回は、最も思い出深い五目チラシについてお話しよう。
今でも酢のツーンとした香りや、一品ずつ丁寧に煮た具の美味しさが蘇ってくる。
3月のひな祭り、お祝い事がある時は必ず作っていた一品。見た目も綺麗で、優しい味がするこのご飯は、沢山作りお世話になっている方々にもお届けしていた。
入れるものは、人参、ハス、油揚げ、シイタケ、さやえんどう、錦糸卵、そして上に散らす紅生姜。
切り方、味の付け方、具の混ぜ方、そして盛り方にまでそれぞれこだわりがあった。
料理とは味だけでなく見た目も大事。「赤」「黄」「緑」の基本の3色が入ると美味しそうで華やかになる。さらに「白」「黒」が加わると、よりオシャレになってくるという。
まさに母親が作っていた五目チラシには5色入っていた。だから綺麗で、美味しそうだったんだ。
色合いの他に作った物を美味しそうに見せるには、並べ方、器の余白の使い方、料理の盛り方、器選びなども重要になってくる。
私は常々、それらのことを考え盛るようにしている。料理本やご飯を食べに行ったら味の付け方、盛り方を見て勉強している。
また五感を使って料理を楽しむことも大事。
食材の彩り、食器、テーブルウエアーなどによる視覚、新鮮な野菜を丸かじりした時の「パリッ、ポリッ、シャキシャキ」と聞こえる聴覚、食材の「ツルツル、シコシコ、パリパリ」と感じる触覚、甘い、辛い、しょっぱい、苦いなどの味覚、料理を口に運ぶときに感じる香りの嗅覚、これらすべてを使って料理を楽しみたい。
6年前に母親が亡くなった。あの世で味わってほしいと告別式の日、朝早くから作った五目チラシを棺の中にそっと忍ばせた。3月のひな祭りには、ちょっと早かったけれど。
一品ずつ丁寧に味付けして作っていた母親の五目チラシには到底及ばないが、一生懸命作った一品だった。何といってくれただろうか。
今でも近所の方々が「お母さんの作った五目チラシが美味しくて忘れられないわ」と言ってくださるのが嬉しく、誇らしい。
私が作った料理を懐かしく思ってくれる人はいるだろうか。そんな料理を作りたい。
2024年12月 | ||||||
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